エルダリーガーデン 私たちの志

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エルダリーガーデン施設長
総合診療医・小児科専門医・農学博士
矢野(松永) 慶子

終の棲家ではない、在宅に復帰するための中間施設

 平成3年、エルダリーガーデンが出来た頃、世の中にはまだ「ねたきり老人」や「老人病院」なるものがありました。
 脳卒中になったら最後、歩けず、外にもいけず、家にも帰れず、点滴のときはベッドにくくりつけられ、お尻には大きな褥創(床ずれ)があるような・・・。
 小児科のお医者さんだった私が、縁あって老人保健施設を立ち上げる事になって、最初に思ったのが「ねたきり老人病院にはしない」事でした。

 「エルダリーガーデン」という名前は、英語の「キンダーガーテン(幼稚園)」から発想してつけられました。
 老人保健法施行とともに始まった、老人保健施設。
 最初から「終の棲家ではない、在宅に復帰するための中間施設」と位置づけられており、在宅生活を助けるためのショートステイ・デイケアが併設必置でした。
 「そうか、介護の必要なお年寄りを抱えた、ご家族を助けるための施設なんだな、だったら、お年寄りのための幼稚園と同じだな(ちょっと語弊があるけど・・・)。」
そんな発想からつけられた名前です。

 ご自宅や病院で居られた、寝たきりに近い御高齢者をお預かりして、いざ、1日10回の移乗が始まると、苦労の連続でした。
 3度の食事と午前・午後のリハ・レクの5回の離床。布団から離れ、また布団に返る。中には30分と座っておられず「布団に返して」と言われる方も。状態の重い方々を1時間~2時間も惹き付けておく術が、最初の頃はスタッフにはありませんでした。

 「こんな老い先短い年寄りを、あんたら何故動かすのか?」
 その頃はそんな常識もありました。でも私たちは固く信じていました。
 「座れないんじゃない。座る機会が無かったから座れなくなっただけ」。
 確かに。3ヶ月もすると、皆が気付くようになります。座れなかった方が、座れるようになってきました。

 今では生活リハ、と一言で言いますが、私たちは残存能力のある方には過剰な介護はしません。
 1日10回の移乗時には、できる限り足底を着地させ、お尻を上げてもらえるのなら丸抱えもしません。ベッド上仰臥位から車椅子端座位に至る動作分析と介助の仕方は、15年間変わっていません。
 一度他に転職し、数年後に復職したスタッフが驚く程です。「何一つおろそかにされてない。そのままだ」。
 きつい、と思われる事もあったかもしれません。だけど15年間やってきて、うちの御利用者は本当に「ぴんころ」です。(ぴんぴんころり、の事。語弊があって御免なさい)。
 可能な限り皆と移動し、食堂でご飯を食べ、確かに老いはやってきて亡くなられる日は来るにしても、数日寝たきりとなるにしても、褥創(床ずれ)は発生しません。

私たちは在宅復帰支援施設で有り続けたい。

 平成5年、在宅介護支援センターの委託を頂きました。老健施設でプールを持っている施設は珍しく、水中リハを取り入れたデイケアが随分と在宅の御利用者に支持して戴いていました。
 ヘルパー派遣も始まり、いつも私たちは自問自答しています。
「在宅復帰に、どこまでこだわるべきなの?」

 在宅支援センターの仕事を通じて、実子や親戚もなく、近所つきあいも無い御利用者が、お一人で年を重ねてゆく現実を数多く見させて戴きました。
 綺麗ごとではありませんでした。医療職だけでは残ってしまう隙間。ソーシャルワーカーという素晴らしい仲間がいなければ、この隙間は埋められませんでした。彼らは高齢者医療・高齢者福祉の中心になってゆく、皆がそう予感していました。

 平成12年、介護保険がついに始まりました。
 老健施設の暗闇の時代。「老健施設は特別養護老人ホームと同じ(終の棲家)になる。」と言われました。
 私たちの施設にも押し寄せた長期入所化の波。外出も外泊もできない御利用者が少しずつ増えてしまいました。哀しみ。いくらリハを励行しても、御利用者は目標を達成できません。
 ある年、スタッフ皆に聞きました。「何故、在宅復帰できないの?」
 現場から出る、様々な意見。その中で浮かび上がってきた、御利用者の、人間の心理。

「御利用者は本当は全員ご自宅に帰りたい」
「ご家族への遠慮があって言い出せない」
「ご家族は施設に預けておけば安心という事もあって、帰宅については言い出さない」

・・・それなら、職員が御利用者とご家族の間を取り持とうよ。そんな機会を増やそうよ。
ここでも足らなかったのは、やっぱりソーシャルワークでした。

 平成18年の介護保険見直し。老健施設の在宅復帰機能が再び盛り込まれました。
 ちょうどケアマネージャーも社会福祉士も、十分な要員が確保でき、いつの間にか「本日2名退所、3名入所」というような回転のある部署に再生していました。

 そして今、殊更に思う。
 介護保険施設のあり方は色々あるだろう。終の棲家を追求するのも良いでしょう。
 だけど、私たちが今までやってきた事を社会に還元するのなら、私たちは在宅復帰支援施設で有り続けたい。「オムツになっても、認知症が出ても、おうちに帰っておいで」そうやって迎えてくれるご家族を、環境を、この社会の中に残していきたい。

エルダリーガーデンはガーデン(園)ですからね。
必要な時に立ち寄って、おうちに帰って、また立ち寄って。
そんな風に行ったりきたりして親しんでいただければ、これ以上の事はありません。

水の力・人の手の優しさ

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